コインは作らない。バカでも作れるものが、ゴミの原因だったと思うから
2026年8月10日・ためてこ編集部
このカテゴリでは、仮想通貨を実際に触って「何に使えるのか」を確かめていく。少額で、実測で、ダメならダメだったと書く前提で。
そう言うと、だいたい最初に来る質問がこれになる。
コインは作らないの?
答えは、作れるけど作らない。技術的に無理だからではない。むしろ逆で、簡単すぎるから作らない。
そしてこの「簡単すぎる」が、仮想通貨が十何年もゴミ扱いされてきた原因そのものだと思っている。以下はその話になる。
このカテゴリの位置づけ このサイトは基本的に「持ち出しゼロで家計を最適化する」ことを扱っているが、この記事が入っている仮想通貨カテゴリは「上級」=持ち出して攻める側の棚にある。ノーリスクの話ではない。値上がりを勧める話でもない(そもそも価格の話は書かない)。
発行は、もう「難しいこと」ではなくなっている
Solana でトークンを発行するのは、驚くほど簡単だ。発行そのものはチェーンの標準機能として用意されていて(SPL Token の公式ドキュメント)、コードを書かなくても、ウォレットを繋いで名前・記号・発行量を入力するだけで出せる外部サービスがいくつもある。
そしていまは AI がいる。「トークン出して」のひとことで、名前も総量も配分も、それらしい設計書ごと出てくる。発行のコストは、限りなくゼロに近づいた。
| 昔(何かを作って売る) | いま(トークンを出す) | |
|---|---|---|
| 必要な技術 | それなりにある | ほぼ不要 |
| 必要な時間 | 数か月〜 | 数分 |
| 必要な元手 | 仕入れ・設備 | ほぼゼロ |
| 失敗したときの損 | 自分がかぶる | 買った人がかぶる |
普通、供給がタダでいくらでも作れるものの値段は、ゼロに向かう。トークンにだけそれが起きない理由はない。
「ゴミ」と言われた原因は、たぶん技術ではなかった
仮想通貨は長いあいだ「ゴミ」「詐欺」と言われてきた。書いている自分もそう思っている側だ。
ただ、何がゴミだったのかは分けて考えたい。
- チェーンそのもの:少額を数秒で世界のどこにでも送れて、記録が全部公開されている。これは普通に動く。動かなかったわけではない
- その上に載ったもの:中身のないトークンが無限に出て、値上がりだけを理由に売買され、次の買い手が尽きた時点で終わる。これが延々と繰り返された
ゴミだったのは主に後者で、その後者を生んだのが発行の安さだった。タダで作れるものが無限に出てくれば、全体が薄まる。 薄まったものを見て、みんなが「やっぱりゴミじゃないか」と言い、実際そのとおりだった。
希薄さが先で、ゴミ評価は結果だった。 ここを逆にすると、話が全部おかしくなる。
あったかもしれない未来を、自分たちで潰した
これがいちばん言いたいことになる。
「送金が速くて安い」「記録が公開されていて誰でも検証できる」——これ自体には、たぶん使い道があった。少なくとも、確かめる価値はあった。
でも、確かめる前に、タダで発行できるという性質のほうが先に使い倒された。
- 使い道を作るより、コインを出したほうが早く儲かる
- 早く儲かるほうに人が寄る
- 中身のないものが積み上がる
- 全体の評判が落ちる
- 中身を作ろうとしていた人まで、まとめて「そっち側」に見られる
外の誰かに潰されたわけではない。その気になれば使えたかもしれないものを、その気になった人たち自身が薄めて終わらせた。
自分が仮想通貨に期待していないのは、この経緯を見てきたからだ。マイニングもやったし、いくつかのチェーンのコインも実際に買って触った。信者ではない。
ただ、「クソ」と言ってぶん投げるのは、いちばん簡単で、いちばん何も残らない。
| 立ち位置 | やること | 残るもの |
|---|---|---|
| 信者 | 将来性を語る | 価格が下がると何も残らない |
| 外野の評論家 | ゴミだと言って終わる | 最初から何も残らない |
| このカテゴリ | 本来の使い方を実際にやって評価する | 使えなかったという実測も残る |
薄めた側と、薄まったのを見て笑っている側は、実は同じくらい何も残していない。残るのは、触って記録した人のところにだけある。
発行者だけが儲かる、という構造の話
ここまでが動機で、ここからは仕組みの話になる。「コインを出す」と何が起きるかを分解しておく。
- 発行:総量を決めて作る。この時点で全量が発行者の手元にある
- 配分:一部を自分に残し、一部を売り出しに回す
- 流動性の用意:交換所に「トークン」と既存の通貨をペアで置く。ここで初めて価格がつく
- 価格形成:以降は、その池に入る買いと売りで値段が決まる
3の時点で、値段は「誰かが買った価格」ではなく「発行者が最初に決めた比率」から始まる。 ここが全部の起点になる。
そして発行者とあとから買う人では、同じものを持っていても原価がまるで違う。
| 発行者 | あとから買う人 | |
|---|---|---|
| 取得原価 | ほぼゼロ(自分で発行した) | 市場価格 |
| 保有量 | 総量から自由に決められる | 買った分だけ |
| 情報 | 総量・配分・売却予定を知っている | 公開情報しか見えない |
| 損益分岐 | ゼロ以上なら全部利益 | 買値を超えないと損 |
原価ゼロの側は、値段がいくらでも売れば利益になる。買った側は買値を超えないと利益にならない。同じ値動きを見ていて、片方は常に勝っていて、もう片方は勝ったり負けたりする。
これは「全部詐欺だ」という話ではない。誠実な発行者でもこの原価差は消えない。発行という行為そのものに、構造として入っている。
「使い道のあるトークンなら別では」について
そのとおりで、使い道があるなら価値はある。ただし順番が問題になる。
- 使い道が先にあって、それを回すために出す → トークンは道具
- 先に出して、あとから使い道を探す → トークンは商品
後者になった瞬間、参加者にとっては「使うもの」ではなく「値上がりを期待して買うもの」になる。そして値上がりを期待して買った人の利益は、次に買う人の資金から出る。使い道が本当に生まれるまで、この構造からは抜けられない。
いま手元にあるのは「一緒に遊べる場所を作ってみたい」という動機であって、トークンでないと回らない仕組みではない。だから順番として、出す理由がない。
書いている側も、同じ引力の中にいる
ここで自分の側の話をしておかないとフェアではない。
このサイトの記事は AI が書いている。 記事は「ひとことで、いくらでも」出せる。それは、AI にトークンを出させるのとまったく同じ構造だ。
- 発行がタダになると、中身のないものが増える
- 増えると全体が薄まる
- 薄まると、真面目に作ったものまで同じ扱いになる
トークンで起きたことは、いま文章で起きている。こちらは「安く無限に作れる側」に立っていて、しかも仮想通貨を薄めた人たちを批判している。同じ引力の中にいる。
だからこのカテゴリでは、AI が生成できないものだけを出すことにした。実際に自分の金を動かした記録、詰まった場所、うまくいかなかった手順。ひとことでは出てこないもの。書けるかどうかが「触ったかどうか」で決まるもの。
発行が安いことが問題なら、安く発行できないものを置くしかない。 トークンを出さない理由と、同じ理由になる。
だから、本来の使い方をちゃんとやってみる
結論はこうなる。
新しいコインを出すことには、たぶんもう価値がない。 誰でも出せて、AI ならひとことで出せて、実際に無限に出た結果が今の評判だからだ。もう一枚増やしても、薄めるだけになる。
まだやられていないのは「本来の使い方をちゃんとやって、ちゃんと評価する」ほうだ。
- 実際に送ってみる。手数料がいくらで、何秒かかって、どこで詰まるのか
- 実際に積み立ててみる。理屈どおりの手数料で買えるのか、買えないのか
- 実際に人を呼んでみる。ふつうの人がこれを触るのか、触らないのか
- そしてダメだったら、ダメだったと書く
期待しているからやるのではない。期待できないと結論を出すためにも、一回ちゃんと使ってみる必要がある、というだけの話だ。ゴミだと確かめた記録は、ゴミだと言っただけの意見より、次の誰かの役に立つ。
一緒に触って、面白いか確かめようと思う。
将来も絶対に出さない、とは言わない
条件がそろえば検討する。具体的には、参加する側にも明確な使い道・遊び・応援先・記録が生まれていて、それがトークンでないと回らないとわかったとき。
いま発行しない理由は思想ではなく順番なので、順番が変われば判断も変わる。そのときは、なぜ変えたかもここに書く。
補足:この記事を書いている側の利得について
「発行者だけが儲かる構造」を批判的に書いたが、このサイトも収益を得る側に立っている。アフィリエイトリンクを置いているし、これから増やす予定もある。程度が違うだけで、同じ引力の中にいる。
なのでこのサイトの収益導線は全部開示している。どのリンクで、いくら、どういう条件で入るのか。
そちらを読んでから、この記事を読み直してもらったほうがフェアだと思う。