電気とガスのセット契約は本当に得?単体契約と比べるときに見る3つの数字
2026年7月31日・ためてこ編集部
「電気とガスをまとめると安くなるらしい」。乗り換えを調べていると、必ずこの案内に当たります。手続きも請求も1本にまとまるので、悪い話には聞こえません。
ただ、まとめた人の感想を見ていくと、そこそこの割合で「思ったほどではなかった」が混じります。国民生活センターが2024年12月6日に公表した注意喚起にも、「ガス代が安くなる」と言われて契約したが、ごくわずかな金額しか安くならないことがわかった、という相談事例が挙がっています。
これは「セット割が詐欺」という話ではありません。比べる前に契約してしまうと、得か損か自分で判定できない——それだけの話です。ここでは、セットと単体のどちらが得かを自分で判定するために見る数字と、その手順を書きます。
この記事の結論
セット割で見るべきは「割引額」ではなく 「電気+ガスの合算年額」。割引の型は定額値引き・単価引き下げ・ポイント付与の3つで、型が違うと自分の使用量での効き方も変わります。判定手順は ①検針票から年間使用量を出す → ②同じ使用量で「セット」と「単体の best 組み合わせ」の合算年額を出す → ③差額を解約金と手間で割り引く。この3つを埋めれば、他人の節約額を信じる必要はなくなります。
そもそも、なぜ「セット」が売られているのか
電力の小売は2016年4月1日、都市ガスの小売は2017年4月1日に全面自由化されました(国民生活センターの前掲資料・資源エネルギー庁)。それまで地域ごとに決まっていた会社以外からも、料金やサービスで選べるようになった制度です。
資源エネルギー庁が2018年2月に公開した解説記事「実施から1年、何が変わった?ガス改革の要点と見えてきた変化」では、自由化後に増えた新しい料金・サービスの類型として、料金割引・ポイントサービス・電気や通信とのセットサービスなどが挙げられています。つまりセット販売は、自由化で会社が選べるようになった結果として出てきた「競争の道具」のひとつです。
ここが出発点として大事なところで、セットは「まとめると原価が下がるから安い」のではなく、「2つとも自社で契約してほしいから割り引く」という性質のものです。だから割引の設計は会社ごとにバラバラで、条件も自由に付けられます。「まとめれば得」が自動的に成り立つ仕組みではない、と理解しておくと判断がぶれません。
| よくある理解 | 実際 |
|---|---|
| まとめると原価が下がるから安い | × 2契約を自社で取るための割引。設計は会社ごとに自由 |
| セット割がある=単体より必ず安い | × 割引後でも、単体の安いプラン同士に負けることがある |
| 請求・問い合わせ先が1つになる | ○ ここは確実なメリット(金額に出ない価値) |
| ガスも電気と同じくらい下がる | △ 使用量の母数が小さいぶん、金額は小さくなりやすい |
割引の「型」は3つ。型が違うと効く家庭も違う
各社のセットプランの説明ページを開くと、割引はだいたい次の3つのどれか(またはその組み合わせ)で書かれています。まず自分が見ているプランがどの型かを判別すると、比較がぐっと楽になります。
| 型 | 書かれ方の例 | 効きやすい家庭 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ① 定額値引き | 「セットで毎月◯円割引」 | 使用量が少ない家庭(少額でも比率で効く) | 使用量が増えても割引額は増えない |
| ② 単価引き下げ | 「セットで電力量料金の単価が◯円/kWh引き」 | 使用量が多い家庭(使うほど効く) | 使用量が少ないと体感がほぼ出ない |
| ③ ポイント付与 | 「利用金額◯円ごとに◯ポイント」 | そのポイント経済圏を普段から使っている家庭 | 使い道が限られると実質の値引きにならない |
ここで一番ズレやすいのが③です。ポイント付与型は「還元率◯%」と書かれるので割引に見えますが、ポイントの使い道が自分の生活と噛み合っていないと、家計の支出は1円も減りません。ふだんその経済圏で買い物をしているなら現金値引きとほぼ同じ価値、そうでないなら価値は割り引いて数える——という扱いにしておくのが安全です。
①と②の違いも実務的です。在宅時間が長くて電気をよく使う家庭は②のほうが伸び、一人暮らしで使用量が小さい家庭は①のほうが素直に効きます。「どっちの割引額が大きいか」ではなく「自分の使用量ならどちらが大きいか」。ここは次の章で数字にします。
比べられるのは「合算年額」だけ
セットと単体を比べるとき、多くの人は割引額(月◯円引き)を見ます。でも割引額は元の料金プランが違えば意味が変わるので、単独では比較材料になりません。割引が大きくても、割引前の単価が高ければ結果は逆転します。
比較できる形にそろえるには、次の1本の数字に落とすだけです。
比較に使う唯一の数字
(電気の年額 + ガスの年額 − 割引・ポイント分)
これを「セットにした場合」と「単体で選んだ場合」の2通り出して、引き算する。
月額ではなく年額にするのは、電気もガスも季節で使用量が大きく振れるからです。冬の1か月だけで比べると、暖房の使い方で結論がひっくり返ります。12か月ぶんを通した年額なら、その振れが均されます。
年間使用量は、電力会社・ガス会社のマイページ(会員ページ)で過去12か月の使用量が見られる場合がほとんどです。紙の検針票しかない場合も、直近1年ぶんを手元に集めれば足ります。この「自分の年間使用量」は一度出しておくと、電気・ガス・セットのどの比較にも使い回せる資産になります。
なお、この年額を出す作業は電気代の中身を知っていると格段に速くなります。基本料金・電力量料金・燃料費調整・再エネ賦課金がそれぞれ何で決まるかは、別記事にまとめてあります(記事末の表からどうぞ)。
そのままパクれる判定手順(30分・電卓だけ)
特別なツールは要りません。順番だけ守ってください。
- 年間使用量を書き出す。電気は12か月ぶんの kWh、ガスは12か月ぶんの m³。マイページに履歴があればそれをメモ。合計と、ついでに「一番多い月」「一番少ない月」も控えておく。
- 「セットにした場合」の年額を出す。候補の会社の公式サイトにある料金シミュレーションに、1で出した使用量を入れる。セットプランを選んだ状態で電気・ガス合わせた年額を出す。
- 「単体で選んだ場合」の年額を出す。電気は電気で安いプラン、ガスはガスで安いプランをそれぞれ選び、公式シミュレーションで年額を出して足す。ここを飛ばすと比較が成立しません——セット同士を比べても、単体に負けているかどうかは永久にわかりません。
- 差額から「出ていくお金」を引く。今の契約の解約金・違約金、工事費の残債があれば差し引く。乗り換え先に最低利用期間があるなら、その期間ぶんで差額を数える。
- ポイント型の割引は割り引いて数える。自分がそのポイントを日常的に使い切っているなら満額、たまにしか使わないなら半分、使い道が思いつかないならゼロで数える。楽観の分だけ判定が甘くなります。
- 申し込みは経由を1回だけ挟む。同じ申し込みでも、ポイントサイトを経由するかどうかで初回にもらえる分が変わることがあります。手間はワンクッションだけなので、ここは取りこぼさない。
この6ステップの意味は、ひとことで言えば 「他人の節約額を、自分の使用量に置き換える」。料金は使用量とエリアで変わるので、記事やSNSで見た「年◯円下がった」は、そのままでは自分の数字になりません。1で出した年間使用量さえ持っていれば、以後どの会社の試算も同じ土俵に乗ります。
契約前に確認する落とし穴
金額で勝っていても、条件で引っかかると結局マイナスになります。申し込みボタンの前に、この5つだけ見てください。
| 確認すること | なぜ | 見る場所 |
|---|---|---|
| セット解除で割引が消えるか | 片方だけ他社に移すと、残った方の割引も消えることがある。将来の選択肢を縛る | プランの適用条件・約款 |
| 解約金・最低利用期間 | 差額より解約金が大きければ乗り換えは成立しない | 重要事項説明書・料金ページ |
| 都市ガスの供給エリアか | そもそも選べる会社が無い地域がある。プロパンガスは制度が別 | 各社のエリア検索 |
| セット前提で基本料金が高くないか | 割引後にようやく単体並み、という設計もありうる | 割引前の料金表 |
| 誰と契約しているか | 訪問・電話勧誘では、契約先の社名が曖昧なまま話が進むことがある | 重要事項説明書の社名・連絡先 |
最後の1つは、金額の話ではなく身を守る話です。国民生活センターが2024年12月6日に公表した注意喚起では、契約当事者の年代別にみると若年層では訪問販売が8割近くを占め、それ以外の年代では電話勧誘販売も一定の割合を占めるとしています。同資料には「管理会社から委託を受けた」と言われて切り替えたが、管理会社は委託していなかった、という相談事例も載っています。
同センターのアドバイスはシンプルです。料金プラン等の説明を受けたうえで検討し、契約の意思がない場合ははっきり断る。切替契約後でもクーリング・オフ等ができる場合がある。困ったらすぐ相談する。相談先は消費者ホットライン「188」、または経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会の相談窓口(03-3501-5725)です。
ちなみに、都市ガスは全国どこでも使えるわけではありません。資源エネルギー庁の前掲解説によれば、ガス導管が敷設されているのは国土面積の6%弱、都市ガスの普及率は全国で約50%程度(2018年2月時点の記事)。自宅がプロパンガスなら、この記事の「セット」の話はそのままは当てはまりません。まず自分がどちらかの確認から。
結論:セットは「先にまとめる」ではなく「電気を決めてから乗せる」
セット割は、条件が合えば素直に効きます。請求が1本になる管理のラクさも、金額に出ないぶん過小評価されがちな価値です。
ただ順番があります。削れる金額が大きいのは電気のほうなので、先に電気の乗り換え先を決め、その会社にセットがあるかを見る。この順番なら、ガス単体で最安を探し回る労力を使わずに、取りこぼしだけ拾えます。逆に「セットありき」で入ると、電気の選択肢をガスの都合で狭めることになります。
そして判定に必要なのは、結局この記事で出した3つの数字だけです——年間使用量・セットの合算年額・単体の合算年額。これさえ手元にあれば、来年どこかの会社が新しい割引を出しても、同じ電卓で判定できます。
| 次にやること | 記事 |
|---|---|
| ① 電気の乗り換え先を先に決める | オクトパスエナジーはハピタス経由が得?個人が月9,341円下げた実例 |
| ② 年額を出す前に電気代の中身を知る | 電気代の内訳は何で決まる?燃料費調整・再エネ賦課金・託送料を1枚で理解する |
| ③ ガス側の仕組みと限界を押さえる | 都市ガスは自由化で安くなる?乗り換えの仕組みと、電気とセットで拾うコツ |
| ④ 乗り換えの実務(必要なもの・日数) | 電力会社の乗り換え手順は?必要なものと日数をそのまま使える形に |
| ⑤ 申し込み前に経由を1回だけ挟む | ハピタス登録方法 完全ガイド──投資原資ゼロから始める「最初の一歩」 |
出典:国民生活センター「電気・ガスの契約トラブルにご注意!-若年層は訪問販売、それ以外の年代は電話勧誘販売の相談が見られます-」(2024年12月6日公表)/資源エネルギー庁「実施から1年、何が変わった?ガス改革の要点と見えてきた変化」(2018年2月15日公開)/経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会「相談窓口」。制度・統計は各公式資料の公開時点のもの、料金・割引額・ポイント付与率は変動するため、必ず各社公式の料金シミュレーションで最新をご確認ください。